デザインフェスタギャラリー原宿では、映像作品を上映・展示できる「アートシアター」を設けています。
映画、アニメーション、モーションコミック、ミュージックビデオなど、ジャンルを問わず映像作品を発表できる出展形式です。

今回は、AIを活用しながらオリジナルの映像作品を制作し、アートシアターで上映している出展者の方にインタビュー。
映像制作を始めたきっかけから、作品を発表できる場所を探してきた経験、そしてWebではなくリアルな場所で作品を上映する意味について伺いました。

AIを取り入れながら、オリジナルの映像作品を制作

——今回、アートシアターで上映されている作品について教えてください。

もともとオリジナルストーリーの絵を制作していました。
2023年頃にAI画像生成を使って作品を制作している作家さんを見て、「自分も映画でやってみようかな」と思ったのが、現在の制作につながったきっかけのひとつです。

それ以前から、フリーペーパーで漫画を制作したり、それを「モーションコミック」にしたりすることはやっていました。

——モーションコミックとは、どのようなものなのでしょうか?

簡単に言うと、動かない漫画にスライドのような動きやエフェクトを加えて、ストーリーに沿って流れる映像にしたものです。

例えば宇宙船の絵があったら、噴射している部分だけを選択して動かす。宇宙船自体は止まっているけれど、噴射部分だけが動いているように見せるんです。
爆発している建物なら、炎の部分だけを動かすこともできます。

そういった手法を使って制作していたのですが、使っているAIアプリの機能が進化して、画像そのものに大きな動きをつけられるようになりました。そこから、より本格的な動画を制作できるようになっていきました。

現在は映像だけでなく、音声や音楽にもさまざまなツールを取り入れながら作品を制作しています。

1980年代から映像制作に触れてきた

——もともと映像制作のお仕事などをされていたのでしょうか?

専門学校に通って映像を学んでいました。
さらに大学の映画サークルにも参加していて、1980年代後半頃まで、8ミリフィルムで映画を撮っていましたが、プロの製作現場に関わったことはありません。

当時は今のように、誰でも気軽に動画を撮影して公開できる時代ではありませんでしたからね。

その後は自分で作品を作ることからしばらく離れて、評論などの活動が中心になりました。
そこから時間が経って、最近になって「もう一度ちょっとやってみようかな」と思い、手書きのフリーペーパーなどから創作活動を再開しました。

作品を作っても、「発表できる場所」がなかなか見つからなかった

——アートシアターに出展しようと思ったきっかけを教えてください。

作品を上映できる場所をずっと探していたんです。
自主制作映画などを受け付けているアートギャラリーを調べても、すでに閉店しているところもありました。

特にコロナ禍では、それまで上映イベントを開催していたところが「コロナをきっかけにやめてしまいました」というケースも多くて。
実際にいくつかの場所で作品を発表したこともあります。ただ、その場所に集まる作品の傾向と自分の作品が合わず、浮いてしまうこともありました。

自分は宇宙などを題材にした作品も作っていたのですが、「どうして今の時代にこの題材なの?」というような雰囲気になることもあって。
作品そのものだけではなく、発表する場所との相性もあるんだなと感じました。

「お客さんを呼べるか」を求められることも

——発表する場所を探すなかで、難しさを感じることはありましたか?

ありましたね。

ギャラリーによっては、「フォロワーはどのくらいいますか?」と聞かれることもありました。当時Instagramをやっていてフォロワー自体はいたのですが、北海道や九州、四国など全国各地の方が多くて、東京の展示に実際に来てもらえる人はそれほど多くありませんでした。

また、「作家自身でもお客さんを集めてください」という場所もありました。
もちろん作家自身が告知することも大切だと思います。ただ、自分でたくさんのお客さんを集められることが前提になってしまうと、作品を発表するハードルは高くなってしまいます。

知名度や集客力がまだない人にとって、「作品を発表できる場所」を見つけること自体が意外と難しいんです。

AI作品だからこそ、よりフラットに見てもらえる場所を探していた

——今回の作品ではAIも使用されていますが、それによって発表の難しさを感じることはありますか?

あります。

AI画像生成に対する批判的な意見が強くなってきたこともあり、AIを使っているというだけで否定的に見られることもありました。
それまで作品を発表していた場所には、映画業界やアニメ業界に長く関わってきた方が来ることもありました。

もちろんいろいろな考え方があって当然なのですが、AIに対する批判を受けることへの怖さも少しありました。

だから、「もう少しフラットな環境で作品を見てもらえる場所はないかな」と探していたんです。

決め手は、「自分でお客さんを集めなくても、いろいろな人に見てもらえること」

——そのなかで、デザインフェスタギャラリー原宿のアートシアターを選んだ決め手は何だったのでしょうか?

一番大きかったのは、自然にお客さんが来ることですね。
特定のジャンルが好きな人だけではなく、いろいろな層の人に作品を見てもらえる。

これまで発表場所を探してきたなかでは、「自分でお客さんを呼ばなければいけない」ということも多かったので、自然に来館した人に見てもらえるというのは大きかったです。

ここなら、もう少しフラットに作品を見てもらえるんじゃないかと思いました。

Webで発表することと、リアルな場所で上映することは違う

——Web上で作品を公開することと、実際にギャラリーで上映することには違いがありますか?

全然違うと思います。

Webにはアルゴリズムがありますよね。
作品を公開したとしても、必ずしもいろいろな人に表示されるわけではありません。

でも、こういう街の中にある場所で作品を上映すれば、アルゴリズムに関係なく、たまたま来た人にも見てもらえる。
自分のことを知らなかった人や、普段なら自分の作品にたどり着かなかった人に見てもらえる可能性があります。

そこは、リアルな場所で作品を発表する大きな意味だと思います。

「自分の作品なんて」と恐れず、まずは外に出してみてほしい

——最後に、アートシアターへの出展を迷っている方へメッセージをお願いします。

作品を出すことを恐れる必要はないと思います。

「自分は有名じゃないから」とか、「作品の評判が悪かったらどうしよう」と心配する人もいると思うんです。

最近は、若い作家さんもWebの中だけで作品を発表して、ギャラリーなどリアルな場所には出さないことが増えているように感じます。
でも、Webだけで終わらせず、外に出してみてもいいんじゃないでしょうか。

デザインフェスタギャラリーのように、いろいろな作品を受け入れている場所なら、必要以上に怖がらなくてもいいと思います。
作品をリアルな場所に出せば、Webのアルゴリズムとは関係なく、いろいろな人に見てもらえる。

だから、作品を外に出すことはおすすめしたいですね。

映像作品を、「Webの外」へ

YouTubeやSNSなど、映像作品をオンラインで発表できる場所は以前よりも増えています。

一方で、今回のお話にあったように、Web上では出会えなかった人に作品を見てもらえることは、リアルな展示・上映だからこその魅力です。
デザインフェスタギャラリー原宿の「アートシアター」では、プロ・アマチュアを問わず、さまざまな映像作品を上映することができます。

「作品は完成したけれど、発表する場所がない」
「SNSやYouTubeだけではなく、実際の空間で作品を見てもらいたい」
「個展を開くほどではないけれど、自分の映像を誰かに見てもらいたい」

そんな方も、作品をWebの外へ出してみませんか。